タレントマネジメントシステムとは? 機能や活用方法、導入目的について

人的資本経営や人事領域のデジタル化が重要視される昨今、タレントマネジメントシステムを導入する企業が増えています。

タレントマネジメントシステムは、戦略人事に活用できるツールとして期待される一方、導入や運用に不安を感じるケースも多いです。

そこでこの記事では、タレントマネジメントシステムの機能や導入目的、活用方法についてわかりやすく解説します。導入の注意点もあわせてご紹介しますので、ぜひご覧ください。

人事管理システムを選ぶためのポイントとチェックシートはこちらから「人事管理システムを選ぶポイントと2つのチェックシート」資料をダウンロードできます。

1.タレントマネジメントシステムとは

タレントマネジメントシステムとは、従業員のあらゆる情報を一元管理し、人材を最大限活用するためのシステムです。

各従業員のスキル、資格、職務経験、勤怠、目標設定といった情報を集約することで、人材配置や人材育成などを戦略的にマネジメントできます。

1-1.タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、従業員の能力やモチベーションといった人材情報を、戦略的に活用することで経営目標達成を狙う人材マネジメントです。
従業員のあらゆる情報を採用や配置、育成に活用し、パフォーマンス最大化を目指すことから、タレントマネジメントは「人事戦略そのもの」とも言えるでしょう。

従来のタレントマネジメントは、優秀な人材のみを対象としていました。
しかし、タレントマネジメントシステムの登場により、大量の人材情報を扱えるようになったため、近年では全従業員を対象に行う企業が増えています。

また、人事戦略は企業目標や経営課題によって異なるため、タレントマネジメントの実践内容も企業ごとに異なります。

1-2.タレントマネジメントの対象

引用:HR総研「「タレントマネジメントシステム」に関するアンケート調査 結果報告

タレントマネジメントの対象となる人材は、

・全従業員

 ・幹部候補、特別な技能を有するプロフェッショナル人材

の2パターンに大別できます。

ちなみにHR総研の調査によると、タレントマネジメントを運用する企業のうち、全従業員を対象にしている企業は53%と最も多いです。

全従業員を対象にする場合、一般的にはパート従業員やアルバイトまで含めますが「正社員のみ」など、対象を絞るケースもあります。

一方、経営幹部候補を対象にする場合、高いスキルや経験を持つ優秀な人材が対象となり、リーダーシップ論にもとづいた人材活用と教育を進めます。

また、特別な能力を持つプロフェッショナル人材を対象にする場合、能力に見合った適材適所の人材配置を実行することが重要です。

能力開発はもちろん、適材適所の配置と相応のポジションを用意することで、組織と従業員のパフォーマンス最大化を目指します。

2.戦略人事にはタレントマネジメントシステムが必須

従業員のあらゆるデータが蓄積されるタレントマネジメントシステムは、戦略人事の推進に必要不可欠です

タレントマネジメントシステムを活用すると、一元化された従業員の多様なデータをもとに、さまざまな切り口から課題解決へのアプローチを検討できます。

精度の高い戦略人事の意思決定がスムーズに行えるようになり、環境の変化に応じた柔軟性の高い経営が実現できます。

2-1.タレントマネジメントシステム普及の背景

近年、戦略人事の推進を目指して、タレントマネジメントシステムを導入する企業が増えました。

その背景としてあるのが、

・人材不足への対応

・競争優位の確保

・多様化する人材

といった経営課題です。

人材不足への対応

近年、日本における労働人口の減少は深刻な社会問題となっています。

少子高齢化により労働者の確保が難しい状況の中、持続可能な経営を行うには、戦略的な人材採用と既存人材のパフォーマンス最大化が欠かせません。

そのため、戦略人事を行うためのツールとして、タレントマネジメントシステムを導入する企業が増えています。

競争優位の確保

カントリーリスクやグローバル化、DX化の進展など、企業経営をとりまく環境変化のスピードが加速しています。

予測困難なVUCAの時代で競争優位を確保するには、経営戦略にもとづいた人材マネジメントを迅速に実行することが重要です。

戦略をスピーディーに実行可能なプランに落とし込まなければ、意思決定スピードの加速化が進む内外企業との競争優位を確保することが難しくなります。

特に、日本は他の先進諸国と比べると一人当たりの生産性が低いです。経営効率を高めるには、終身雇用を代表とする日本独自の人事制度からの脱却も、視野に入れる必要があるかもしれません。

タレントマネジメントシステムは、こうした戦略人事を可能にするために用いられています。

多様化する人材

「働き方改革」推進の影響もあり、「働く」ことに対する価値観が多様化しています。また、新型コロナ感染症の流行後は、テレワークも一般化しました。

働き方が多様化したことで、従来の画一的な人事制度での運用が合わなくなったため、一人ひとりに適した人事マネジメントの必要性が高まっています。

そして、多様化した人材を適切にマネジメントするには、高度な戦略人事が不可欠なので、タレントマネジメントシステムの導入が進んでいるのです。

人事管理システムを選ぶためのポイントとチェックシートはこちらから「人事管理システムを選ぶポイントと2つのチェックシート」資料をダウンロードできます。

3.タレントマネジメントシステムの導入状況

引用:HR総研「「タレントマネジメントシステム」に関するアンケート調査 結果報告

2019年10月に実施されたHR総研の調査によると、タレントマネジメントを行っている企業の約50%がタレントマネジメントシステムを導入済みです。

また、導入準備中の企業は約20%であることから、約7割が「タレントマネジメントシステムを活用してオペレーションを実施する方針」ということになります。

導入の選定基準で最も多かった回答は「運用コスト(65%)」、次いで「初期コスト(51%)」です。多くの企業は投入できる予算が限られるため、コストは最優先で検討されるといえるでしょう。

コストに次いで多くの回答を得たのは「操作性(40%)」「機能の充実度(35%)」「組織構成への対応可能性(31%)」です。

コストパフォーマンスの高いタレントマネジメントシステムをお探しの人事担当者の方は「【2023年版】タレントマネジメントシステムの価格相場や無料トライアルありのサービスは?」も参考にしてください。

4.タレントマネジメントシステムの機能

タレントマネジメントシステムには多くの機能が実装されていますが、その中でも代表的な機能を解説します。

タレントマネジメントシステムをお探しの方はタレントマネジメントシステム徹底比較! 選定ポイントや目的別の選び方」もあわせてご覧ください。


4-1.人材情報データベース管理

従来は、紙やエクセルで部署ごとに管理されることが多かった様々な人材データを、1箇所に集めてデータベース化します。タレントマネジメントシステムの最も基本的な機能です。

従業員の氏名や住所といった個人情報をはじめ、入社年度、職務経歴、人事評価、資格、スキル、研修受講履歴、異動履歴などを一元管理し、人材情報を「見える化」します。

閲覧権限さえあれば、どの部署からでもアクセス可能で、部署間の情報共有も容易です。この機能により、データに裏付けされた人事戦略の検討や意思決定が可能になります。

4-2.人事異動・配置シミュレーション

人材配置のシミュレーションをシステム上で行える機能で、多くのタレントマネジメントシステムに搭載されています。

人材情報データベースに登録されている従業員のスキル、経験値、キャリア志向などのデータから必要な人材を検索して発掘、該当部署にアサインすることが可能です。

この機能により、組織のパフォーマンスを最大化するための人材配置を、迅速に見つけ出せます。

4-3.人事評価の管理

従業員の目標達成度合いや、進捗管理などに従った人事評価の運用をシステムで行う機能です。従来の人事評価にかかる工数を削減できます。

MBOやコンピテンシー評価など、評価制度に対応しているシステムが多いので、自社の評価制度に合わせた運用ができます。

4-4.採用管理

入社希望者の応募から、採用決定までの一連のプロセスを一元管理する機能です。一般的なタレントマネジメントシステムの採用管理機能では、採用試験や採用面接の結果など、進捗を含めた採用業務の結果をデータ化します。

蓄積された既存従業員の人材データをもとに、自社に必要な人材像を分析しておくことで、求める人材が明確になり、採用のミスマッチを防ぎます。

4-5.アンケート

従業員に対するアンケートをシステム上で実施できる機能です。

アンケート項目は自由に設定でき、モチベーション調査や従業員満足度調査に用いられることが多い機能です。

従業員の仕事に対する意識、自社に対する思いなどを集計、分析することで、従業員の声を「見える化」でき、精度の高い人事戦略の立案につなげられます。

4-6.データ分析・レポート作成機能

蓄積された人材情報を様々な角度から分析し、レポートを作成する機能です。

例えば、離職者の傾向を分析すれば、従業員の中から離職する恐れがある社員を発見できます。離職リスクが高い従業員を把握できれば、早めに対策を講じられるでしょう。

5.タレントマネジメントシステムの導入目的・活用方法

タレントマネジメントシステムを導入する最も大きな目的は、経営目標の達成です。

経営目標の達成に必要な要素として、

・人事戦略の達成に必要な人材の調達

・生産性を向上させるための人材育成

・人材配置の最適化による組織パフォーマンスの最大化

の3つがあげられます。

また、タレタレントマネジメントシステムの導入事例やメリット・デメリットについてはこちらで「タレントマネジメントやシステム導入のメリット・デメリット、導入事例をご紹介」解説しております。

5-1.人材調達

経営目標達成に必要な人材を確保するプロセスです。人材調達の手段は、大きく分けて2種類あります。

新規採用では、タレントマネジメントシステムの採用管理機能の活用が最適です。

新規採用では、タレントマネジメントシステムの採用管理機能の活用が最適です。蓄積された自社の人材データから、自社に適した人物像や該当部署に適した人物像を分析することで、採用のミスマッチを防ぎます。

既存人材から適材適所の人材を発掘するには、タレントマネジメントシステムの配置シミュレーション機能、人事評価管理機能、人材情報データベースのスキル管理の活用が最適です。

該当ポジションに最適な人材を迅速に見つけ出せます。

5-2.人材配置

組織のパフォーマンスを最大化するための人材配置を行うプロセスです。

従業員一人ひとりのポテンシャルが最大限発揮される「適材適所の人材配置」により、組織のパフォーマンス最大化を目指します。

従業員のパフォーマンスを向上させるには、各従業員のスキル、職務経験、目標達成の度合い、仕事やキャリアに対する意識などの把握が必要です。

それらを踏まえたうえで、配置を検討しなければなりません。適材適所の人材配置は従業員のモチベーション向上にもつながります。

タレントマネジメントシステムの人材情報データベース機能や人事評価管理機能の活用が最適です。

部署単位やプロジェクトのパフォーマンスを向上させるには、メンバー個々の能力や個性、さらにはメンバー同士の相性も考慮する必要があります。

タレントマネジメントシステムの人事異動・配置シミュレーションと人材情報データベースを活用すれば、定性的、定量的なデータをもとにした精度の高い人材配置が可能になります。

5-3.人材育成

人材育成は、従業員の能力、スキルを高めて自社の業績向上につなげるプロセスです。

従来は上司の経験や勘に頼ることが多かった人材育成ですが、タレントマネジメントシステムを活用すれば、データに裏付けられた戦略的な人材育成が可能になります。

タレントマネジメントシステムのスキル管理や目標管理機能を活用することで、各従業員の状況に合った育成計画を立案できます。

人材育成の研修などの受講履歴は、部署間で共有できますので、人事異動があっても一貫した育成を行えます。

5-4.人材代謝

組織には人材の代謝も必要です。

必要な人材が不足している場合、期待したパフォーマンスを発揮しない従業員がいる場合などに必要なプロセスです。

人材代謝は、上司の勘や相性などに左右されてきましたが、タレントマネジメントシステムを活用すれば、データにもとづいて実行できます。

タレントマネジメントシステムの目標管理機能や人事評価機能の活用が最適です。

人事管理システムを選ぶためのポイントとチェックシートはこちらから「人事管理システムを選ぶポイントと2つのチェックシート」資料をダウンロードできます。

6.タレントマネジメントシステムの導入のポイント

現在、多くのベンダーが様々なタイプのタレントマネジメントシステムを提供しています。その中から自社に適したシステムを選定するには、いくつかのポイントがあります。

ここでは、タレントマネジメントシステムの選定ポイントを解説します。

6-1.導入目的とゴールを明確にする

タレントマネジメントシステムの選定においては、導入目的とゴールを明確にしておくことが重要です。

自社の解決したい課題が明確になれば、タレントマネジメントシステムに求める機能も特定されてきます。

例えば、適材適所の人材配置が目的なら、人員配置シミュレーション、スキル管理、人事評価といった機能が必要です。

一方、効率的な人材育成が課題なら、スキル管理、目標管理といった機能が必要となります。

課題の抽出には、「経営目標や長期ビジョンを達成するため」という視点も欠かせません。長期的に見て必要な機能を特定し、過不足のないシステムを選定しましょう。

6-2.使いやすいシステムを選ぶ

タレントマネジメントシステムを触ったことがある人は、少ないです。

難解であったり、操作が複雑であったりすると、社員のストレスになるばかりか、活用が疎かになることさえあります。

誰もが理解しやすく、操作性が高い、使いやすいシステムを選びましょう。

6-3.必要な機能は揃っているか

タレントマネジメントシステムには、「人材配置に強みを持つタイプ」「人事評価や人材育成に強みを持つタイプ」など、それぞれに特徴があります。

中には、必要な機能が装備されていなかったり、不要な機能が多く装備されていたりすることもあるでしょう。

必要な機能がなければ意味がないですし、使わない機能が多くても無駄にコストがかかってしまいます。

導入目的に適した機能が備えられているかどうか、しっかり確認しておきましょう。

6-4.自社にあった提供形態か

タレントマネジメントシステムは、クラウド型とオンプレミス型があります。自社の導入目的や運用形態、費用対効果に合わせて選択することが大事です。

ベンダーのシステムにインターネット経由でアクセスするタイプです。

自社でサーバーを用意する必要がないので、導入期間が短く、導入コストも安価なため、近年はクラウド型が主流です。

サーバーのメンテナンスはベンダー側が行うため、保守管理の業務負担やコストも抑えられます。

自社で用意するサーバーにソフトウェアをインストールするタイプです。

クラウド型と比べると、導入コストやメンテナンスコストは高くなりますが、自社の運用形態に合わせた拡張やカスタマイズをしやすいのが利点です。

6-5.セキュリティレベルは十分か

タレントマネジメントシステムには、膨大な人材データが蓄積されており、機密性の高い情報やセンシティブな個人情報も含まれます。

したがって、システムのセキュリティレベルも重要なポイントです。

セキュリティレベルは、

・IDやパスワードも含めた情報漏洩防止策

・特定IPアドレスに限定したアクセス制限

・不正アクセス防止策(特定アクセスの除外など)

・デバイス紛失時の対策

など、強固なセキュリティが確保されているかどうかを確認しましょう。

6-6.サポート体制は整っているか

タレントマネジメントシステムをスムーズに導入するには、ベンダーによるサポートが必要不可欠です。

自社の人事制度や業務オペレーションに適した運用設計をする必要があるため、導入前には要件定義や設計、導入後には操作の不明点などのサポートが求められます。サポート体制が十分に整っているか、しっかり確認しましょう。

タレントマネジメントシステム「ヒトマワリ」は、専任の担当者が導入前はもちろん、導入後もしっかりサポートします。

二人三脚で貴社に合ったシステムづくりをお手伝いしますので、安心してご利用いただけます。

6-7.無料トライアルは可能か

タレントマネジメントシステムと自社の相性は、実際に操作してみて初めてわかることも多いです。

そのため、無料トライアルを用意しているベンダーが多いですが、トライアル期間や機能制限の有無は、各社で異なります。

導入検討に十分な無料トライアルが用意されているか、確認しておきましょう。

7.タレントマネジメントシステム導入時の注意点

タレントマネジメントシステムを導入し運用を開始する際は、注意しておくべき点がいくつかあります。

自社に適したシステムを採用しても、運用に問題があれば、満足のいく効果を得ることはできません。導入前にしっかり確認しておくと良いでしょう。

7-1.こまめに情報更新する

タレントマネジメントシステムの情報は、常に最新のものである必要があります。

人材情報は時間を追うごとに変化するため、育成状況、個別目標の達成具合、職務経験の変化など、情報更新は遅延なく実行しなければなりません。

古い情報のままでは、分析結果に誤差が生じてしまい、人事戦略の立案に支障をきたします。

7-2.システム導入を周知する

タレントマネジメントシステムの利用者は、人事担当者や経営陣だけではありません。

従業員情報の入力やアンケート回答の入力などは、従業員自身が行うため、必ず全従業員にシステム導入を周知しましょう。

システム導入の目的や意義、操作方法などをしっかり周知し、正確な情報を収集することが大事です。

7-3.PDCAを回す

タレントマネジメントシステムの導入は、目的や課題解決が達成されなければ、意味がありません。

課題解決に向かってよい結果が得られるよう、PDCAを回して運用の改善を随時実施することが重要になります。

人事管理システムを選ぶためのポイントとチェックシートはこちらから「人事管理システムを選ぶポイントと2つのチェックシート」資料をダウンロードできます。

8.まとめ

タレントマネジメントシステムは、人事戦略のスピーディーな立案と実行に最適なツールです。

人事戦略の実現に役立つシステムですので、十分な効果を得るには、導入前の調査や計画、適切な運用が非常に重要です。

自社の経営目標達成に寄与するシステム選定と、運用方法を見出すためにも、信頼できるベンダーを選びましょう。