人事労務管理とは? 人的資源管理との違いや人事・労務の業務内容について解説
「人事」と「労務」は混同されることも多い業務ですが、役割はそれぞれで大きく異なります。
本記事では、人事労務管理の重要性や違い、業務のために必要な知識を紹介します。
【本記事でわかること】
・人事労務管理の基礎知識
・人事管理と労務管理の違い
・人事労務管理に関わる法改正
・人事労務管理の注意点
人事労務管理の仕事内容について具体的に知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
1.人事労務管理とは? 役割と重要性
人事労務管理とは、企業の経営資源である「ヒト」を対象に管理する業務です。
企業の継続的な成長に必要な人材を確保し、各従業員の能力を最大限活用することで企業の生産性向上を目指しています。
従業員一人ひとりの心情・立場・変化に寄り添う、柔軟な対応が求められます。
人的資源管理(HRM)との違い
人事労務管理と似た言葉に、人的資源管理があります。
人的資源管理は、会社経営のために欠かせない資源である「ヒト」が、最大限のパフォーマンスを発揮できるようにサポートする仕組みです。
人事労務管理の考え方 | 人的資源管理の考え方 |
人材は労働力でありコストととらえて、利益の最大化を図る。 労働者を管理し、統制する仕組み。 | 人材は企業にとっての財産であり、希望や特性を尊重して組織的に成長をサポートする。 |
1-1.人事労務の役割①快適な職場環境づくり
人事労務にとって、快適な職場環境を作ることはとても重要な仕事です。
内閣府の調査によると、近年の日本では労働の中核を担う25〜64歳の精神障害者数が、増加傾向にあります。
上図からわかるように、人事労務として従業員が安心してストレスなく働ける環境を提供し、精神的な健康を守ることは大きな課題になっています。
具体的な施策としては、
・適材適所の配置換え
・育成のサポート
・メンタルヘルスを含めた健康面の管理
・労働時間の管理や福利厚生の充実による労働環境の改善
などです。
上記のように細やかに配慮し、従業員にとって快適な職場環境を整える必要があります。
1-2.人事労務の役割②会社と従業員の信頼関係をつくる
人事労務は、従業員の会社に対する信頼を保つために必要な仕事です。
よくあるトラブルとして、
・有給を使わせてもらえない
・希望する日に休みを取りにくい
・成長機会がなく、やる気がなくなる
があげられます。
会社への不満がたまるほど信頼度は低下し、離職を検討する原因になります。
優秀な人材に長く働いてもらい離職率を下げるためにも、従業員が安心して働ける環境づくりが大切です。
1-3.人事労務の役割③経営戦略の実行役
人事の役割は、安心できる職場環境づくりだけではありません。「戦略人事」と呼ばれる、経営戦略に合わせた人材採用や育成・再配置を行います。
数年後の経営ビジョンを見据え、どのような人材が必要か・どのような教育が必要かを考えます。
例えば、営業で事業拡大を目指す場合、商品を売り込む方法は2通りです。
・既存の市場に持ち込む
・新規市場に売り込む
それぞれのパターンでは営業トークが異なり、アプローチも替えなければなりません。もちろん必要な人材や必要な資質もそれぞれです。
具体的な未来の経営戦略を思い描き、それに準じた人材の採用・育成を担うのも人事労務の役割です。
2.人事管理と労務管理の違い
次に、人事管理と労務管理の違いを解説します。
人事管理 | 労務管理 | |
重要視する点 | 従業員(個人) | 会社(組織) |
業務内容 | ・人材採用 ・人材育成・教育 ・人事評価 ・人材配置 ・モチベーション・健康管理 | ・勤怠・給与管理 ・社会保険・福利厚生手続き ・安全衛生管理 ・業務改善の取り組み |
2-1. 人事管理とは
人事管理とは、経営目的達成のために従業員を効果的に統制し、運用するための業務です。
企業が求めるスキルを持った人材を募集・面接・採用するなど、安定した会社運営ができるよう従業員をコントロールします。
2-2. 労務管理とは
労務管理とは、従業員の労働条件や労働環境を管理するための業務です。
「従業員と企業の間でトラブルが発生した場合、相談窓口として労務管理担当者が対応する」といったように、従業員と密に接する業務でもあります。
3.人事管理の具体的な業務内容
人事管理の具体的な業務内容について、順に解説します。
3-1.採用
自社の採用方針を参考に採用プランを立案し、企画から実行までの業務を担当します。
【業務内容】求人広告作成・求人票作成・面接・連絡・調整
3-2.人材育成
事業目標達成に必要な人物像を定義し、雇用した従業員のレベルや能力に応じた教育を施します。
【業務内容】育成に関する課題を現場から吸い上げる・個人に応じた育成プラン作成
3-3.人事評価
スキル・勤務状況・勤務態度・職務遂行度・貢献度など、あらゆる角度から人材を評価します。
ただし、不透明な評価制度では、従業員のモチベーションを損なう原因になります。評価制度の策定には十分な配慮が必要です。
3-4.人材配置
人材評価を参考に、従業員一人ひとりの能力・適性を見極めて適切に配置します。
生産性向上・組織の活性化・従業員のモチベーションアップにもつながる大切な業務です。
3-5.モチベーション管理
人事管理の大切な仕事に、従業員のモチベーション管理があげられます。
従業員のモチベーションが下がる要因は、
・人間関係に関する悩みがある
・自己評価と会社の評価が離れすぎている
・仕事のやりがいがない
・給与や福利厚生面で不満がある
・成長を感じられない
のように、さまざまです。
モチベーション低下は離職の原因になるため、定期的な面談やメンター制度の導入などで積極的に従業員の悩みを拾いましょう。
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4.労務管理の具体的な業務内容
労務管理の業務内容について、順に解説します。
4-1.労働契約の締結
応募者の採用が決まったら、企業との雇用関係を結ぶために労働契約を締結します。このとき、書類の作成・応募者への対応を行うのが労務管理の担当者です。
応募者から合意を得られた場合、労働契約書に加え、就業時間や賃金などの情報を記載した労働条件通知書も作成します。
4-2.労働条件の変更・管理
労働条件を変更する際には、労働契約の締結と同じく従業員の合意が必要です。
給与の減額・手当の廃止のように、従業員が不利益を被る場合は必ず本人の合意を得なければなりません。
労務管理担当者は、従業員の対応・書類作成・申請など一連の手続きを行います。
4-3.就業規則の作成・変更
従業員が常時10人以上いる企業では、就業規則の作成が必要です。労働基準監督署に届け出て、従業員に周知させなければなりません。
就業規則には、
・賃金や退職に関する絶対的記載事項
・何らかの制度がある場合に記載する相対的記載事項
・休職や異動の制度に関する任意記載事項
の3つの項目を記載します。
記載内容は法改正や業務の実態に応じて変更しますが、労働契約と同様、従業員の不利益になる場合には同意を得なくてはなりません。
労務管理担当者は、規則の作成・変更・従業員の対応を実施します。
4-4.社会保険の手続き
福利厚生には、法律で定められた法定福利と、社内で定められる法定外福利があります。
法定福利には健康保険・雇用保険・労働保険などの各種社会保険が含まれており、従業員採用時に加入手続きを行います。
法定外福利は企業ごとに異なりますが、特別休暇・育児休暇・社宅制度などが該当し、これらを管理するのも労務管理の仕事です。
4-5.勤怠管理
労務管理では、従業員の出退勤時間・遅刻欠席の有無・取得休暇の計算などを正確に管理します。
必要であれば、長時間勤務が目立つ従業員への勤務時間改善や、産業医へのメンタルチェックを促す、といったサポートも実施します。
4-6.給与計算
勤怠管理で得たデータを参考に、給与額の支払い計算をします。従業員の労働の対価である給与計算では、ミスは許されません。
具体的な業務は、
- 従業員の労働時間を集計する
- 総労働時間から総支給額を計算する
- 各種保険料・税金を計算する
- 総支給額から各種保険料・税金を控除する
- 従業員に給料を振り込み、保険料と税金を納付する
です。
給与計算の業務は、労働条件に関する法律を熟知し、労働基準法が定める賃金支払いの原則についての知識を備えたうえで、正確に遂行する能力が求められます。
給与計算ソフトなどのツールを導入すると、人的ミスを防ぎ、効率よく業務を進められます。
4-7.健康管理
労働安全衛生法にもとづき、従業員の安全と健康を守るための業務を行います。
企業は従業員の雇入れ時・1年以内ごとに1回の健康診断が義務付けられており、労務担当者は「健康診断の管理」「結果の記録」「従業員への通知」「労働基準監督署」への報告を行います。
また、近年増加しているメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、労働安全衛生法では一定規模以上の事業場に対するストレスチェックが義務化されました。
労働者50人以上の事業場は、1年以内ごとに1回、医師や保健師などによるストレスチェックを実施しなくてはなりません。
労務担当者は結果を調査・分析し、職場環境改善のために努めましょう。
4-8.職場環境の改善
労務管理では労働環境全般を取り扱うため、業務改善も重要視しています。特に職場のパワーハラスメントは問題視されており、予防と対策が大切です。
・パワーハラスメント
・セクシュアルハラスメント
・妊娠・出産・育児休業などに対するハラスメント
上記のようなパワハラ解決・予防のため、7つの取り組みがあることも覚えておきましょう。
1.企業のトップからのメッセージ発信
2.社内ルールの作成
3.従業員アンケートによる実態把握
4.研修の実施
5.会社方針の社内周知
6.相談窓口の設置
7.再発防止の取り組み
ハラスメント対策や長時間労働の是正のように、労務管理は従業員が快適に過ごせる環境づくりにおいて重要な役割を担っています。
5.【2023年・2024年】人事労務分野の法改正
人事労務分野では見逃せない法改正が、日々行われています。業務上でのトラブルを防ぐために、法律や世の中の流れを覚えておきましょう。
1.税制改正
2.労働基準法改正
3.育児・介護休業法改正
4.年金制度改正
5.雇用保険法改正
各法律に関連する改正状況を紹介します。
5-1.税制改正
税制改正で知っておきたい法改正は1つです。人事労務管理担当者の実務への影響も解説します。
国外居住親族に係る扶養控除の見直し
2023年1月1日、全企業を対象に国外居住親族に係る扶養控除の見直し制度が発布されました。
月々の給与計算で、非居住者(国籍を不問・国内に1年以上住所も居所もない者)のうち、原則として「30歳以上70歳未満」は扶養対象外となりました。
ただし、留学生・障がい者・38万円以上の送金を受けている者は従来通り扶養対象です。
人事異動による海外赴任の可能性がある企業では注意が必要で、
・家族にまとめて38万円以上を送金しても対象外であること
・個人ごとに送金が必要であること
・年の途中で出国する場合、出国前に年末調整が必要であること
・38万円以上の送金が確認できた時点で扶養対象として給与計算をすること
以上を理解しておきましょう。
5-2.労働基準法改正
税制改正で知っておきたい法改正は3つです。
1.中小企業の時間外労働割増賃金率引き上げ
2.賃金のデジタル払いの解禁
3.時間外労働の上限規制の猶予措置が終了
人事労務管理担当者の実務への影響・注意事項も解説します。
中小企業の時間外労働割増賃金率引き上げ
2023年4月1日より、中小企業を対象に「月60時間を超える法定時間外労働に対する法定割増賃金率」が、25%から50%に引き上げられました。
就業規則の「割増率」を変更する必要があるか・給与計算システムの内容を変更する必要があるかを確かめておきましょう。
参考:厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます
賃金のデジタル払いの解禁
従来の労働基準法では、労働者への賃金の支払いは通貨払いが原則でした。
しかし2023年4月1日より、全企業で現金を用いずにデジタル(電子マネー)で賃金を支払うことが可能になりました。
導入を検討する企業の労務担当者は、労働者の同意を求める手続きのうえ、申請が可能です。
デジタル払いの解禁により、企業は銀行手続きや振込手数料がなくなり、労働者の希望に柔軟に対応できるというメリットが得られます。
一方で、銀行振込とデジタル払いの二重管理が必要になるため、業務の煩雑化には注意が必要です。
参考:厚生労働省 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について
時間外労働の上限規制の猶予措置が終了
2024年4月1日より、時間外労働の上限規制が猶予されていた「建設事業・自動車運転業務・医師」の猶予措置がなくなります。
これまではやむを得ず長時間労働になっていた職種・業種ですが、法改正後は時間内での労働が求められるようになるため、施行開始までに業務体制の改善を図る必要があります。
5-3.育児・介護休業法改正
育児・介護休業法改正で知っておきたい法改正は1つです。人事労務管理担当者の実務への影響も解説します。
育児休業取得状況の公表の義務化
2023年4月1日より、雇用する労働者数が常時1,000人を超える企業を対象に、育児休業の取得状況を公表することが義務化されました。
事業年度終了後3カ月を目途に、自社ホームページや厚生労働省のウェブサイトの「両立支援のひろば」を活用して、外部から分かる方法で公表しなければなりません。
人事労務管理担当者は、どこで公表するべきか決めておきましょう。
5-4.年金制度改正
年金制度改正で知っておきたい法改正は1つです。人事労務管理担当者が知っておきたい実務も解説します。
パート・アルバイトの社会保険適用拡大
2024年10月から、一部のパート・アルバイトの社会保険加入が義務化されます。
社会保険の加入対象となるのは、
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額の賃金が8.8万円以上
・2カ月を超える雇用見込みがある
・学生ではない
のすべての条件を満たすパート・アルバイトです。
企業では加入対象者を把握し、必要に応じて個人面談を行うなどのケアをしておきましょう。
人事労務管理担当者は、厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を参考に書類を作成し、オンラインで届け出る必要があります。
5-5.雇用保険法改正
雇用保険法改正で知っておきたい法改正は1つです。
高年齢雇用継続給付の見直し
2025年4月より「雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者」を対象に、高年齢雇用継続給付が縮小されます。
従来は「60歳以後に支払われる各月の賃金が原則として60歳時点の賃金額の75%未満の場合、65歳になるまでの期間は各月の賃金の最大15%を支給する」というものでしたが、給付額が15%から10%に引き下げられます。
6.人事労務管理の注意点
人事労務管理は、日々の業務で4つのポイントについて注意しておきましょう。
・法令・法律の遵守
・会社の顔であることを自覚する
・改善しつづけることを意識する
・戦略人事を意識する
それぞれ詳しく解説します。
6-1.法令・法律の遵守
人事労務管理の業務には多くの法律が絡むため、十分に理解したうえで遵守する必要があります。
労働基準法・労働組合法・マイナンバー法・労働関係調整法・最低賃金法など、業務にかかわる法律の知識を学びつづけなければなりません。
例えば、労働契約締結の際は労働契約法によって定められた以下の5原則に従う必要があります。
・対等な立場で合意する
・均衡を考慮する
・仕事と生活の調和を考慮する
・信義に従い誠実に行動する
・権利を乱用しない
法令違反をした場合、罰金・罰則といったペナルティを科されたり、労働者から訴訟を起こされたりする可能性があります。
社会的信用を保持するためにも、法令遵守は必須です。
6-2.会社の顔であることを自覚する
人事労務管理の仕事は社外の人と接する機会が多いため「会社の顔である」という自覚を持って行動する必要があります。
就職説明会や面接などで社外の人と接する際には、発言・ふるまいに十分注意しましょう。
近年では、個人の発言やふるまいがSNSで取り上げられ、雇用主である企業が糾弾されるケースも発生しています。
就活生や他の企業、ひいては一般の人が持つ自社へのイメージを大きく左右するため、会社の顔として常に気を配った行動を心がけましょう。
6-3.改善しつづけることを意識する
法律の改正・IT技術の進歩・ハラスメント対策など、時代とともに企業を取り巻く環境は変化を続けています。
人事労務管理についても同様で、現状維持では適切な業務をまっとうできないため、常に改善・進歩する意識を持ちつづけなければなりません。
従業員が働きやすい環境を整え、時代に合わせた働き方を提案・提供できるように新しい取り組みにチャレンジし続けましょう。
6-4.戦略人事を意識する
人事労務管理は、会社の経営戦略立案のためにも重要な業務です。数年後の会社の未来を見据え、戦略的かつ効率的な人材採用・人材育成・人材配置が求められます。
今後は少子高齢化による労働人口減少により、これまで以上に戦略人事が重要になるでしょう。
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7.戦略人事の実現なら『ヒトマワリ』がおすすめ
人事労務管理は経営に関わる側面を持つ重要な業務が多い分、多くのデータを管理しなくてはなりません。
『ヒトマワリ』の人事管理システムを利用すれば、応募者管理はもちろん、給与・勤怠・評価・労務といった従業員のあらゆる情報を一元管理できるため、業務の効率化に役立ちます。
さらに、一般的な人事管理だけでなく、評価管理・ワークフロー管理・アンケート機能を活用すれば、経営戦略の立案にも活用できます。
データ化した従業員情報をもとにさまざまな分析やシミュレーションを実施し、人事面からの経営サポートも可能です。
「効率的になる」だけじゃない。これからの経営戦略にも役立つ『ヒトマワリ』のシステムをぜひご活用ください。